LIFEEEEE!

”生きるように学び、学ぶように生きる” 

スパコンが切り開く未来

スパコンといえば、日本における「京」が有名である。
先日、生の「京」を見る機会があった。その京という文字が書かれた複数並んだコンピューターはまるで中国の始皇帝 兵馬俑坑を見ているようだった。
 
 f:id:sam000urai:20151228084457j:image



スパコンとは
 
その名の通り、スーパーなコンピューター。
概要はwikipediaを参照。 

概要

普及価格帯の計算機の性能では実行不可能な超大規模な計算処理が目的であり、それを実現するための特別な構造(極端に大量のCPUコアを搭載する,超大容量のメモリを搭載するなど)を備えたハードウェアやハードウェアに最適化されたソフトウェアを備える。有限要素法や境界要素法などに基づく構造解析、気象予測、分子動力学、シミュレーション天文学、最適化問題、金融工学のような大規模数値解析に基づくシミュレーションに利用される。計算機による大規模シミュレーションを前提とした科学は特に計算科学と呼ばれ、スーパーコンピュータの設計に大きい影響を与えている。そのような計算科学の成果を元に、工業製品の設計や評価を行うCAEの分野でも広く利用されている。

スーパーコンピュータ - Wikiwand

 
 
スパコン「京」
 
「京」がこなすのは、コンピューターシミュレーション。事例を挙げれば、天気予報、津波被害予測、ジェット機の飛行シミュレーション、住友ゴム工業のタイヤづくりなど。例えば、住友ゴム工業のタイヤ作りのどの部分で「京」が使用されているかといえば、ゴム内部のエネルギーロスの発生状態をマイクロメートルのスケールで予測をする。とりわけタイヤ表面の磨耗はナノメートルの状態から崩壊し、それが積み重なって大きな歪みとなり、エネルギーロスを生み出すそうだ。それらのシミュレーションを行うに扱う情報量が多いことから、通常のコンピューターではできないため、「京」の出番となるのだ。
 
 f:id:sam000urai:20151228084546j:image
 
 
スパコンの未来 PESY Computing斎藤氏
 
スパコンといえば、最近日本で話題となっているのが、PESY Computing斎藤氏であろう。10年後には、なんと6リットルの容量に73億人の脳を収めるとのことだ。斎藤氏の書いた「エクサスケールの衝撃」も冒頭だけ読んだが、スパコンの未来はもちろん、不老やフリーエネルギーなどのスパコンによって切り開かれる未来が書かれている。また、スパコンはあくまで道具であることや、日本から次世代コンピューターを生むなどのメッセージを残している。とても分厚い本なのでなかなか読むのに時間がかかると思うが、年末年始で読み終えたい。
 
スーパーコンピュータは自然科学分野の神秘を解明し、この世界の未来を切り拓いていくための「道具」、「ツール」であると考えています。即ち、最終的な目的ではなく、夢を実現するための手段であるとの認識であります。
 
アランチューリング、ノイマンがコンピューターを創ってはや、7、80年ほど経つ。
スパコンはさらなる飛躍の中にある。
どこかで言及されていたことだが、ハードはムーアの法則通りに今まで進化してきている。これからもある一定ラインまでは同じように進化し続けるであろう。だが、問題はソフトウェアだ。ソフトウェアはやはり人間が手を加え、改良し続けないといけない。そこには創造性や発想の転換が必要だろう、と。
 ハードの下地は出来上がる。あとはソフトだ。
 
このソフトウェアが日本から生まれればすごいことである。
ともかく、次世代のスパコンが切り開く未来にワクワクするのであった。
 
 

シンギュラリティサロンに行ってきた!第二弾「心を創った天才」

f:id:sam000urai:20151202212742j:plain

Photo:電通報よりhttp://dentsu-ho.com/articles/2676

先日、2回目の参加となる

「シンギュラリティサロン第10回公開講演会」に行ってきました! 

今回の話し手はpepperの『感情マップ』を作った株式会社AGIの光吉俊二氏

一言で言うとぶっ飛んだ天才。アーティストとして美大出身の彫刻家、建築家であり、武闘派として空手家、ボクサーでもあり、知識人として医学、工学、数学にも精通。

  

その噂のpepperは昨年の発表時点では人の感情を認識する世界初のロボットであり、そこから1年、自らの感情をもつ世界初のロボットに進化したのだ。

 

情報量が多く、とても全てを消化しきれていないが、簡単に今回のお話の概要と面白かった点を主観的にピックアップしてご紹介。

目次

1)結論

2)面白かった点

3)まとめ 

 

1)結論

結論から先に申し上げると、光吉氏の開発したこの感情認識技術「STは、すごい技術だと感じたということ。

pepperの感情を作ったというだけでもすごいことではあるが、とりわけ日本社会において医療の面から新たなイノベーションが起きるであろう、とても意義高い技術

まさに未来の「心のレントゲン」

「心のレントゲン」で何ができるか?

目の前で話している人の感情がわかる。つまり、嘘をついているのか本音なのかもわかると。また、テレビ越しの音声も解析できることからポジショントークかどうかも全て分かってしまうとのこと。

また、日本の抱えるストレス社会問題に対しても、声でうつ病かどうかを判断できたりと医療の面でもすでに実用化が進んでいるとのこと。

上記のように良くも悪くも使用できるこの技術に対して、氏は自分が悪用しなければ大丈夫だろうという風に答えてはいましたが、まるでパンドラの箱を開けてしまったかのような驚きの技術。

どういう風にこの技術を作り上げたかというと、世界中に40005000あるとされる感情を表す言葉が脳内の分泌物質とどのような因果関係にあるかを医学的に証明し、医学論文も読み漁り(この医学論文から作ったというのがミソ。コレクターだからできたとのこと)、『感情マップ』を作り上げたという。

人は環境に合わせてドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンといったホルモンを脳で分泌することで感情が形成されるが、Pepperも同じく搭載された各種センサーから周囲の状況を読み取り、その情報を「内分泌型多層ニューラルネットワーク」で処理することで似的なホルモンバランスを作り出し、感情を生成する “未来を変える” フレームワーク、Pepperに搭載された「感情マップアプリ」とは? | 未来を変えるプロジェクト by DODA

「感情とは何か」を突き詰めた時に,カギはリズムだと思った。でも,音声については素人でしたから,つてをたどって大学の専門家に質問に行きました。その先生に素人なりの自分の考えを話したら,「それは面白い」と言われ,「音声についてイチから教えてあげよう」と。後で知ったのですが,音声研究の分野ではかなり著名な先生だった

そこで得た知見を基に,音声の基本周波数の変化を感情に結び付けた

音声で重要なパラメータである基本周波数は,喉の形状と関係が深い。では,発声の仕組みを調べようと,生理学や医学のアプローチからも研究しました。彫刻や建築を手掛ける私には,喉の構造がとてもシンプルに見えた。脳の情動,心臓の鼓動,声帯はシステムとしてつながっているんだと思いました。情動と音声の関係をモデル化していった結果として生まれた認識手法がST肉食系研究者,人間の感情を究める - 技術経営 - 日経テクノロジーオンライン

 

 f:id:sam000urai:20151202213049j:plain

 

2)個人的に面白かった点

個人的に面白かったことは、誰もやっていなかった医学論文を読破して感情マップを作り上げたというお話や、アメリカへ行った時にたまたま隣に座っていた人がMITの名誉教授でその縁でMITの教授に就任したという話、すごい技術をいかにバカバカしく使うかが重要だというお話などなど。

ユニークなお話が盛りだくさん。

どれもぶっ飛んでて面白かった。

 

 f:id:sam000urai:20151202213039j:plain

 

3)まとめ

イベント後のフリートークタイムでは、ここでは書けない裏話などたくさん聞けてこの時間もとても面白かった。

「最近幸せだったことは?」という塚本教授からの質問に対して、「アルゴリズムが見つかったこと」という研究者らしい回答から、笑いで世界を幸せにしたいという熱いお気持ちまで伺うことができた。

また、氏はサヴァン症候群で、何もかも数式に見えるとのこと。そのため、すぐに仕組みを理解し、アルゴリズムを組んでしまうことができると。すごいですね。その才能欲しい。

頭の回転の早さ、切り返しの鋭さ、ユニークな歴史観、あらゆる学問の知識、これまでの実績、今やっていることなど、どれをとっても凄い。

というか初めて、「あっこういう人が天才なんだな」と素直に思った。

 

 f:id:sam000urai:20151202213044j:plain

 

イノベーションは大衆が生み出すというように、技術の活用方法こそ重要なポイントであるかと感じる。何はともあれ、この技術が人類にとってこれからもバカバカしく、かつ有意義に活用されることを願うばかりです。

 

多数メディアにも取材されており、TEDxTokyo 2015にも出演されている(理性の部分を取り除いたpepperが暴れ出す映像が見所)ので、そちらも見て頂けるとより人柄が理解できるかと。 

感情認識・感情分析のAGI

“未来を変える” フレームワーク、Pepperに搭載された「感情マップアプリ」とは? | 未来を変えるプロジェクト by DODA

肉食系研究者,人間の感情を究める - 技術経営 - 日経テクノロジーオンライン

激化するパーソナルロボット市場

最近パーソナルロボット関連のニュースをよく目にする。

人工知能の流行と共に、発展してきているのであろう。ロボットは産業用のロボットから、個人にパーソナライズされたロボットへと変わりつつある。

簡単にロボットの歴史を辿れば、本田技研工業が2000年に発表した人型ロボットASIMOから始まり、昨年6月にはソフトバンクと仏アルデバラン・ロボティクスが発表した「Pepper」が話題となった。

まず、ロボットは大まかに2つに分けることができる。

産業用ロボット(人間の代わりに作業を行うロボットを指す)

●サービスロボット(非産業用ロボット。主にサービス業で使われるロボットを指す) 

ここでは産業用ロボットには触れずに、

サービスロボットとりわけパーソナルロボットに焦点を当てたい。

パーソナルロボット

パーソナルロボットとは、一般に、人の生活空間でサービスを補助することが可能であるような個人向けのロボットのことである。パーソナルロボットは、機能的な面だけでなく人間の感覚や感性も考慮されなくてはならないという点で、産業用ロボットとは異なる。パーソナルロボットには、掃除を行うような機能的なものから、ペットのようなエンターテインメント的なもの、あるいはコミュニケーションを目的としたロボットなど、様々な指向がある。パーソナルロボットとは (Personal robot): - IT用語辞典バイナリ

パーソナルロボットとは上の定義によれば、介護ロボットやルンバのような掃除ロボットなども含まれる。介護ロボットと一口に言っても、車イスなどを含む「介護支援型」、歩行支援ロボットなどの「自立支援型」、癒しや見守りとしての機能を持つ「コミュニケーション・セキュリティ型」と分けることができる。掃除ロボットもいろいろと分類はできるだろう。また、警備ロボットや案内ロボット、レスキューロボット、医療用ロボット、人型ロボット、軍事用ロボットなど分類すれば様々である。

ここでは家庭内におけるコミュニケーションに特化したロボットを紹介したい。

 

pepper

       

言わずもがな、softbankのpepper。

言語はIBMワトソンを搭載、音声認識技術によって感情も備えた強者。コミュニケーションされた会話は随時クラウドに蓄積され、会話能力は向上していく。この前初めて知ったのだけど、本体だけの価格しかかからないと思っていたが月額の保険料などがあり、さらに3年間の縛りがあるためトータルで100万円は超えるという。さすがsoftbankといったところだ。

Watsonが日本語をおぼえたら、IBMSoftBankSprintYahoo! JapanのオーナーでありAlibabaの上位投資家の一つ)はその製品を日本の教育、銀行、ヘルスケア、保険、小売業などの業界に売っていくつもりだ。SoftBankとIBMが協力してWatsonに日本語を教える…その全サービスとAPIを日本語化へ | TechCrunch Japan

Pepper(ペッパー)の原型は、もともと、フランスの「Aldebaran(アルデバラン)」という、2005年創業のベンチャー企業が開発したものだが、2012年にソフトバンクが、1億ドルで同社株式の8割を取得することで、商品化にこぎ着けた。 パーソナルロボット販売のビジネスモデルと開発現場の舞台裏 -JNEWS 

musio

                           f:id:sam000urai:20151125033920j:plain

機械学習と自然言語処理を行うテクノロジー企業AKAによるもので、機械学習の専門家・データサイエンティスト・自然言語研究の専門家によるチームによって開発されたロボット http://robotstart.co.jp/robo-musio.html

AKAはイスラエルのテクノロジー企業。クラウドファンディングで人気を得て商品化へ。会話データベースを充実させているのが特徴だそうで、音声認識の精度も高く、子供のはっきりとしない発音でも聞き取れるとのことだ。また、リモコンのような役目も果たすとのことで、IoT時代を見据えての導入であることは間違いない。

会話は英語でのやり取りとなるので、日本人が使うのであれば単に英語学習としても使えそう。普通に欲しい。。来年発売とのこと。

wired.jp

Kibiro(キビロ)

        f:id:sam000urai:20151125040052j:plain

行動情報データ解析企業であるUBIC社の人工知能を搭載し、二足歩行ロボット・全方位センサの開発・製造などを行うヴイストン社が設計と製造をした、「レコメンド」を得意とするパーソナルロボットである。

内蔵カメラは人間の顔を識別し、人によって反応を変えられる。会話を重ねることで、たとえば、店を探す時に利用者の好みに合ったものを勧めたり、飲食店を選んだ感覚をもとに、宿や本などの他ジャンルのものを勧めたりできるようになる 人工知能生かした新パーソナルロボット、強みは「レコメンド」--UBICとヴイストン - CNET Japan 

ダーウィン

            

開発、研究はカリフォルニア大学バークレー校のPieter Abbeel准教授の研究室で行われているという。

彼が不安定な動作をとると、いわゆる『ディープラーニング』によって成長する。これは生物の脳で起きているのと同様のアルゴリズムだ。そこでは神経細胞をシミュレートした非常に複雑なニューラル・ネットワークが利用されている。例えば、片方の腕を単純に伸ばせば重心が移動して倒れてしまうが、そんな時に重心を保つにはどのような姿勢で腕を動かすべきか学ぼうとする。

つまり、『ダーウィン』は、不安定な動作体験を経て、不安定な状況であると認識し、成長していく この「ダーウィン」という子供ロボット、不安定な動きには可能性がある | FUTURUS(フトゥールス)

CogniToys

        f:id:sam000urai:20151125035948p:plain

前回も記事で少し触れたが、会話のできる恐竜ロボット(おもちゃ?)である。

CogniToys は、自然言語を読み取る理解力があるため、子供が恐竜のお腹のボタンを押しながら話しかけると、質問に対して関連性がある情報を提供(子供の年齢に合わせて的確な回答)してくれたりします。そのため、何千個という質問を聞いて、答えてもらったり、お互いに冗談を言ったり、物語(ストーリー)を話してくれたりもできます。インターネットに接続されたデータベースと通信することで、玩具は常にプレイ体験を向上することが可能です。また、使用している子供の好きな色から関心などに沿って玩具がカスタマイズされ、また子供が学習レベルを上げた場合には、算数、スペリング(綴り)、ライミング(押韻)など、内容もどんどん難しくなっていきます。

などなど。

これだけでもごく一部であると思う。今後も益々、増えていくだろう。

もっとも、これからの社会はほぼ100%ロボットと共生するようになり、あらゆる場面でロボットが対応してくるはず。ここで問題なのは、社会がそれを受け入れるか、どう受け入れるのかだ。その手始めとして、デジタルネイティブ世代であり、今後テクノロジーやロボットと共に成長していく子供たち向けに遊び相手となる小型ロボットを提供するというアプローチは非常に合理的である。子供の頃からロボットと共に生活するのが当たり前の価値観を持った人が増えれば、単純に社会に受け入れられやすくなるだろう。

身体性こそ人間らしさ 『人とロボットの秘密』より②

f:id:sam000urai:20151115001152j:plain

Photo:Smart technologies : New types humanoid robots can feelRecent Inventions

  

前回の記事のおさらい。

本書のエッセンスから意識とはなにか、ロボット研究の意義という項目で紹介した。

 

少し重複するがロボット研究の意義要約する。

アンドロイド開発で有名な石黒教授によれば、

『ロボットの研究は究極的に言えば人間理解につながる。また、人間に残されるものは”コミュニケーション”であり、このコミュニケーションの役割を果たすために、人間の肉体が都市に集まっている。だが、コミュニケーションはネット世界へどんどん移行している。この不均衡を解消するため、仮想世界の存在であるものに肉体としてロボットを与え、仮想→物理空間へと結びつけている』とのことだ。

 

解明されていない人間

・人工知能開発当初は、人間と同じように思考する機械の実現は可能性の問題でなく、「いつできるか」という時間の問題だったが、実際は壁に直面した

・世界とは記号で語りつくせない。もっとも複雑なコンピューターでも、魚や昆虫のような単純な生物の行動さえも再現できないため

・人間は人間を自分たちで作ったわけではないので、完全には理解していない。人間と製品(機械)の関係において人間自体がもっとも解明されていないシステムである。

・我々人間は記号を操作する能力を磨き上げ、類を見ないほど複雑な脳を持った生物へと進化してきたが、実は記号論理を持たずに生活していた時間の方が長い。

 

意識はない?

人間の触覚を研究することで、意識を知ろうとアプローチしているのが慶應義塾大学の前野教授だ。聴覚や視覚を持たないアメーバのような単細胞生物でも、つつけば反応することから触覚を持っていると言える。人間はこのような単細胞生物から進化した。となると、意識の原型は触覚を通しての世界とのコミュニケーションにあったのではないか、という仮説を立てた。つまり、意識が実は主体ではなく、結果として出力される”受動的な物語”だと提起している。この仮説を「受動意識仮説」と呼び、研究を行っている。

この仮説は強力なものである。

『例えば、指紋の機能。指紋で物を持った時に重い、軽いを判断しとっさに力を入れたりする。こういう時には意識するよりも先に無意識の領域で判断しているのだ。同じように視覚、思考も触覚と同じように処理しているのではないか、と教授は言う。

通常は脳・意識という主体がトップダウンに自らを運営していると思っているが、「受動意識仮説」では無数の小人が同時並行処理によって自らを運営していると考えている。このプロセスの連続、集合体が我々の振る舞いとなって出力されている。つまり、すべての情報を把握し、解釈した上で統合的に行動を決定していくような主体となる意識などなく、その瞬間瞬間で活発になったニューロン=小人が主導権を握って、「わたし」を運営している』とのことだ。

 

エピソード記憶

「受動意識仮説」で考えていくと、なぜ、意識というアウトプットが必要なのか?と疑問にぶつかる。この答えが「エピソード記憶」にある。

記憶と言語化できない運動のスキルなどの「非宣言的記憶」と本とは何かなど言語化できる「宣言的記憶」がある。さらに「宣言的記憶」は物事の意味を記憶する「意味記憶」、自分の行動や体験を記憶する「エピソード記憶」がある。このエピソード記憶こそがあるから複雑な現実で生きていくことができているわけだ。

また、エピソード記憶によって因果関係のシミュレーション、思考を行うことができる。「受動意識仮説」によれば、このエピソード記憶を実現する機能が「意識」だという。

 

記憶

「非宣言的記憶」- 言語化できない運動のスキルなどの記憶

「宣言的記憶」- 本とは何かなど言語化できる記憶

 ー  物事の意味を記憶する「意味記憶」

 ー  自分の行動や体験を記憶する「エピソード記憶」

このようなことから、意識とは主体でなく、身体性から現れる現象だと言えることができる。そうすると、身体性があるからこそ、手で触って質感を感じることができ、視覚でこの世界を見ることでき、記憶によって思考することもでき、その結果、意識で実感しているような感じなのだろう。

また、人間の意識とロボットが持つ(持つことができれば)意識とは異なる意識であることもわかる。人間の持つ視覚はスペクトルの色の一部分に過ぎない。例えば、犬の見るこの世界、トンボの見るこの世界は全く異なる世界として個々の生物には映る。となると、出力としての意識もまた異なるものである。ロボットにしか見えない世界ができた場合、それはロボットにしか持ち得ない”意識”になるのであろう。

 

『意識と身体があって初めて成り立つ。どちらか一方でもダメで、両者で補完しあってる関係性。つまり、この身体は必要だということ。身体性こそ、人を人たらしめているものなのだ。』 

  

その他 memo

・「ダートマス会議」- アレンニューウェルとハーバートサイモンが数学の定理を証明してみせる初の人工知能「ロジック・セオリスト」を発表した会議

・技術がユニークな解を生み出すヒントは、生命にある。生命は、その45億年の進化と適応の情報を持っている。生命の持つアルゴリズムを技術が構築していけば、人間にとってもっとも安全で、もっと強調できるシステムを作ることができる

 ・キュービックニューラルネットワークとは、階層的な抽象次元を自由に行き来して情報を扱う技術

身体性こそ人間らしさ 『人とロボットの秘密』より①

2008年発行の本だが、内容は色褪せることのないものであった。 

表紙からはあまり魅かれないが、内容はとても面白かったので紹介したい。

 

この本を読む前までの考えは

『人間の本質は意識であり、その意識がネットワーク状に繋がった世界こそ本物である。意識が働き、目で観ることで物質が”ある”のであって、物質で出来上がっているこの現実は幻想に過ぎない。ならば、自分の身体も幻想に過ぎず、意味を持たない。身体がなくてもいいのではないか(将来的に意識をネットワークに乗せて、不死を手に入れることも可能だろう)』

結論から言うと、この考えが少し変わった。

『意識と身体があって初めて成り立つ。どちらか一方でもダメで、両者で補完しあってる関係性。つまり、この身体は必要だということ。身体性こそ、人を人たらしめているものなのだと。』 

どのような点から考えが変わったか、記事の内容から辿っていきたい。

 まず、ロボットとはなんだろうか?

 ロボットの定義

「自動制御によるマニピュレーション機能又は、移動機能をもち、各種の作業をプログラムによって実行でき、産業にしようされる機械」

「実世界に働きかける機能を持つ知能化システム」

 ・ロボットは機械の延長線上である産業用から、自分で世界の情報を収集し、解釈する能力を備えたロボットへと変わりつつある。それはつまり、特定の管理された空間でなく、人が暮らす複雑な世界の中に置かれて機能するだけの汎用性を持った人工システムであるとのこと。 

 

意識とは

 ・「知性そのものは身体から独立しても、思考の対象は感覚なしには現れない。だから感覚をつかさどる体が滅んでしまえば、魂も滅ぶ」ピエトロ・ポポナッツィ

・我々が意識することができるのはつねに感覚によってもたらされる

・人は「なにも考えていない意識そのもの」を意識することはできない

・「私自身と呼ぶものに最も奥深く入り込んでも、私が出会うのは、いつも、熱さや冷たさ、明るさや暗さ、愛や憎しみ、快や苦といった、ある特殊な知覚である」デイビット・ヒューム

・「人間とは、思いもつかぬ速さでつぎつぎと継起し、たえず変化し、動き続けるさまざまな知覚の束あるいは集合に他ならぬ」デイビット・ヒューム

・「心とは、それそのものでは存在しない。外の世界を経験してはじめて生じるものであり、抽象概念だってやっぱりそうだ」デイビット・ヒューム

・実は意識とは「つねに何かを意識している意識」なのだ。何も受信していなくてもテレビはテレビとしてそこにあるが、一方何も意識していない状態の意識は発生しない。例えば夢は意識していても、眠りは意識できない。つまり意識とは何か情報とコミュニケーションしている”状態”であり、魂のような一つの絶対的な実体ではないようである。  

 

ロボット研究の意義

・人にとってもっとも親しみやすいインターフェースは人。だから工学者は人型の機械を研究する必要がある

人が機械とかかわる上において最初の入り口になるのはインターフェース。すなわちロボットの見かけ

人間らしさを人型ロボットで再現する。そこから逆に人間らしさにとって必要のないものをそぎ落としていくそうして最後に残るものが人間に「人間らしさ」を感じさせる原理そのものである

 ・ロボットを人間に近づけていく過程で、不気味の谷の概念が発生する

・人は一体何に人間らしさを感じているのか。人間らしさとは、どこに存在しているのか。

・アンドロイドで研究していることは、実は人間理解である

・技術の発展の先に残るもの、それはコミュニケーションである。この機能だけは機械に代替させることができない。

 

長くなりそうなので、後半に続く